Google揉め事を整理しましょ(1)
Subpoena(ちなみに発音は「サ(sa)ピ(pi)ーナ(na)」ね)の話をしてんけど、ちょっとこれまでの状況を整理しといたほうが良いかも。でも、法律の専門家じゃないから、ほんとーに申し訳ないけど、あまり厳密に受け止めんといてね。でも、できるだけ、正確に伝えるようにがんばるよ。(あとtaninswさん、phoさん、コメントありがとう。分かりやすくするために、できるだけがんばるよ。だから、分からんときは、いつでも言ってね。)
以下の話は、いろんな資料から引っ張ってきてんけど、もしおおざっぱでいいから、ひとつにまとまってもんを読みたいってんなら、有料だけど『Should Indexing Be Fair Use? The Battle over Google Book Search』あたりがおすすめ。
大量スキャンプロジェクトで著作権がクローズアップされてんけど、著作権の観点から「スキャン本」は大きくわけて、3つあるんよ。
1.著作権が切れてる「パブリックドメイン」本
2.出版社か、著作権持ってる人がちゃんと許可した本
3.ちゃんと許可がとれてない本
そんで、明らかに1と2は無問題だね。だから、争ってんのは、3ね。*1
次に、「3.ちゃんと許可がとれてない本」に関して、どうやってスキャンを進めていこうか、っていう段階で、二つの考えがあるんよ。
A.オプト・イン:やる前に「いいですか」って聞いて、そんで「いいよ」っていってくれたら、スキャンするよってこと
B.オプト・アウト:とりあえずやっちゃうから、やだったらやだって言ってね、そしたらやめるからってこと
じゃあ、誰が「オプト・イン派」で、誰が「オプト・アウト派」なの?
まず明らかに、Googleは「オプト・アウト派」で、Googleを訴えてる出版社たちは「オプト・イン派」ね。さらに、Googleに遅れをとったから何か対抗策が必要だったYahoo!とMicrosoftは、便乗型「オプト・イン派」ね。そんで、(大量の本を抱えているって意味で)注目の図書館は実は「オプト・アウト派」なんじゃないかな。なぜ、図書館「オプト・アウト派」説なのかというと、「オプト・イン派」「オプト・アウト派」それぞれの主張を考えてみればいいんじゃないかな。
「オプト・イン派」はこう言うだろう。
どこで誰が電子化プロジェクトをしてるかなんて分かりゃしないよ。それを全部監視して、「あの〜、その本については、公表せんといてほしいんだけど」なんて、拒否メールを打ち続けるなんて、実際には無理だよ。
「オプト・アウト派」はこう言うだろう。
誰が著作権持ってて、そんでそいつが生きてんのか死んでんのか、死んでたらその子供がどこにいんのか、そんなこと全部調べるなんて、できっこないよ。そもそもつぶれた出版社とかもあんだから、最初の著作権リストでさえ、ちゃんと手に入るのかわかりゃしねえよ。
実際に著作権処理がどんだけ大変なのか、経験者に聞いてみよう。
カーネギーメロン大学の調査研究においては,著作権者の連絡先を見つけるのは案外難しく,著作権者にたどり着けないことが実際には多いということが報告されている。これは近代デジタルライブラリーにおいても言えることで,明治時代のように年代が古くなると実務上は許諾まで至ることがなかなか大変であることは,大半の著作物が文化庁長官の裁定(著作権法第67条規定)の対象資料となったことからも窺える。
http://www.dap.ndl.go.jp/ca/modules/ca/item.php?itemid=1026
ここで、著作権法第67条の「著作権者不明等の場合における著作物の利用」ってのが持ち出されてて、
第67条 公表された著作物又は相当期間にわたり公衆に提供され、若しくは提示されている事実が明らかである著作物は、著作権者の不明その他の理由により相当な努力を払つてもその著作権者と連絡することができないときは、文化庁長官の裁定を受け、かつ、通常の使用料の額に相当するものとして文化庁長官が定める額の補償金を著作権者のために供託して、その裁定に係る利用方法により利用することができる。
ってのが、日本では最終的な手段なんだけど、「相当な努力」ってのが、大変なわけさ。「昨日さ、2時間かけて調べたんだけど、分からんかったよ」ってのは、おそらく「相当な努力」とみなしてくれんだろうな。げっそりやせ細って、真っ青な顔で、「もう半年ほど調べてますが、どうしてもわかりません、どうか裁定してください」と頼まんといかんだろうな。
というわけで、「オプト・イン派」と「オプト・アウト派」は、利害が対立してるわけ。そんで、その対立をうまく利用して遅れを取り戻そうとしているのが、Yahoo!とMicrosoftってわけ。*2
Googleとしては、この「オプト・イン」「オプト・アウト」論争に便乗してるYahoo!とMicrosoftが気にくわんじゃないのかな。そんで、Googleは「っていうか、そもそもうちらのやってんのは、Indexingなんだから、Fair Useの範囲じゃん。許可してるとか、しとらんとかいう問題じゃないし。」っていうところを、裁判で争いたいわけ。そうすることで、YとMを「置いてけぼり」にしたいんじゃないかな。
そんなFair Use論争の中から飛び出てきたのが、今回のGoogleによる「Subpoena」で、その「Subpoena」には、Fair Useを立証するんだっていう建前と、実は「諜報活動とまでは言わんけど、ある意味で情報収集作戦なんじゃないの」って本音に対する疑いがあるわけ。そんで、この記が10月18日、10月19日と問題にしたのは、「情報収集作戦」の面。そんで、19日のコメント欄でみんなでわいわい話してんのが、「Fair Use立証」の面。
まずは、ここまで整理しといたよ。次回は、その「Fair Use立証」の面に見え隠れする、「本音」と「建前」を整理していこうと思ってるよ。
*1:実際の裁判では、「ちゃんと」という部分が争点になってて、「ちゃんと」ってどういうことよ!って論争になってるわけ。ややこしいよ、まったく。
*2:ちなみに対立を解決するためには、おおざっぱに2つの方法があって、あ)著作権集中管理機構(http://www.dap.ndl.go.jp/ca/modules/ca/item.php?itemid=959) い)スキャンプロジェクト登録制度。このどっちかをやっていくしかないだろうな。そんで両サイドの「そんなことやっとれん」負担を解消(少なくとも軽減)するしかない。