Digital Land Grab(デジタル版陣取り合戦)

スキャナメーカーKirtas Technologiesとコーネル大学が、書籍をデジタル化するというMicrosoftの新プロジェクト「Windows Live Book Search」で協業することに合意した。

ってニュースが10月19日付けでCNET Japanに出てんだけど、このニュースをどう読もっか。これまで伝えてきた内容と照らしてみるよ。



これって、当事者が3個いて、MicrosoftとKirtasとコーネルね。そんで、誰に注目しようか?ってことだけど、やっぱり「コーネル」だよね。


大量スキャンプロジェクト競争(狭義のDigital Land Grab)*1において、勝敗の鍵を握るのは、図書館だよ、きっと。そこんとこ、間違えんようにしないとね。もし、大量スキャンプロジェクトの行方だとか、現状どうなってんの、ってこと知りたかったら、各図書館(特に浮動票)の動きをちゃんと追っておかんと、GoogleやYahooやMicrosoftなどの「化粧塗りたくりの」発表に振り回されちゃうよ。


なので、ちょっとだけコーネル大学図書館の立場になってみよう。最大のなぞは、「なんで、Microsoftなの?」ってこと。Microsoftってさ、一緒にやっていこうねって約束したはずのUCにはGoogleと駆け落ちされちゃって*2、しかも最近Googleに「Subpoena」で丸裸にされちゃった*3わけでしょ。Microsoftって惨めじゃん。いいとこ、ないじゃん。なんで、Googleじゃなくて、Microsoftにしたの?ひょっとして、間違えた?


というわけで、今回の「Windows Live Book Search」関連ニュースは、「なんで、コーネル大学は、Microsoft陣営への参加を表明したんだ?」って感じで読んだほうがよろしいよ、ってこと。さっそく、コーネル大学の発表を見てみよう。


おそらく、重要な箇所は2つ。
一つ目は、

Cornell University Library is playing a key role in book selection and in setting quality standards for the digitized materials.

というわけで、要するに、「プロジェクトにおいて、コーネル大学が何をスキャンするか決めるし、どんくらいの画質でスキャンしていくのかを決めるのもコーネル大学だからね!」って言ってる。さらに二つ目は、

Microsoft will give the Library high-quality digital images of all the materials, allowing the Library to provide worldwide access through its own digital library and to share the content with non-commercial academic initiatives and non-profit organizations.

というわけで、要するに、「スキャンされたデータは、(金儲けばっか考えてない)ピュアな団体とはシェアするからね!」ってこと。


分かりやすくするために、この二つを正反対にしてみれば、「もしコーネル大学Googleプロジェクトに参加した場合にどうなるのか?」ってのが少しは想像できるかも。

もし、うち(コーネル大学)がGoogleプロジェクトに参加したら、何をスキャンするかは(何が貴重な資料なのかなんてな〜んも分かっちゃいない)Googleが勝手に決めちゃうだろうし、手が写ってたり、ピンボケだったり、画像の品質が悪すぎて、そりゃ見れたもんじゃなくなるよ。しかもさ、せっかく貴重な本をスキャンすんだから、他の教育機関とかと共有するのが、教育者としての使命でしょ。なのに、Googleは共有に制限かけんだよ。ILLもどうしたらいいのか、わからないよ。

確かにこんなひどいんだったら、コーネル大学Microsoft陣営に参加するってのも納得だね。*4


ということで、まぁ、二つのことが言える。

  1. もしあなたが図書館なら、キャスティングボートを握ったつもりで、激しく交渉しよう!例えばUCはGoogleプロジェクト参加にあたって、Image Coordinatesを獲得したよね。*5そんな感じで、無理難題を押し通そう。もし何を交渉材料にすれば良いか分からんければ、メール(bookscanner.sf@gmail.com)ちょうだい。いろいろ「これあったら、お得だよ」ってもんをこっそり教えるよ。図書館の蔵書ってのは、そんくらい貴重な財産なんだよ!有効に使ってね。
  2. Microsoftは、「Opt-In」を売りもんにしてる*6んだけど、今後、「Opt-In」は窮地に立たされるかもしんないって話したよね。でも、Microsoftは「スキャン品質」と「選書自治権」を売りもんにしていけば、道は残されるかもね。いちおう、今回、品質に関しては、コーネル大学のお墨付きってことになったんだよ。だから、品質重視ならGoogleじゃなくてMicrosoftと交渉しよう!ってことになるかもよ。


そんで、その肝心の品質って話だけど、こっちの日経の記事によると、

Kirtasは,大容量の書籍デジタル化で独自のソリューションを用いており,「エラー率は1万ページに1ページ未満」

ってことらしい。だけど、これって相当お茶を濁されてるよね。エラー率ってなんだ?今日は時間ないので、またいつか、この話をすんね。

*1:広義のDigital Land Grabは、http://www.technologyreview.com/read_article.aspx?id=12076&ch=biztechなどを参照ね

*2:http://d.hatena.ne.jp/bookscanner/20060809/1155161419参照してね

*3:http://d.hatena.ne.jp/bookscanner/20061018/p1からの5回シリーズを参照してね

*4:でも、ポイント抽出のため大げさに言ってんだから、まに受けないでね。

*5:http://d.hatena.ne.jp/bookscanner/20061002/p1から数回のImage Coordinates特集を参照してね

*6:http://d.hatena.ne.jp/bookscanner/20061020/p1あたりを参照してね