Amazonスキャンプロジェクトはどこが違う?


そういえば、Amazonの話の途中だったので、話はAmazonへ戻る。
でも、話の流れからして、著作権がらみ。

なんで、Amazonは訴えられないんだろう?



すぐに分かるのは、「著作権もってる人から許可もらってやってっから」ということで、要は「Opt-Inで進めてっから」ってことだよね。でも、これってちょっぴり「うわべだけ話」のような気がする。


なんでかっていうと、レッシグさんは、『Free Culture』の第14章(http://www.authorama.com/free-culture-19.html)で、

What does this industry(出版業界) really want?
With very little effort, the warriors could protect their content. So the effort to block something like the Eldred Act is not really about protecting their content. The effort to block the Eldred Act is an effort to assure that nothing more passes into the public domain. It is another step to assure that the public domain will never compete, that there will be no use of content that is not commercially controlled, and that there will be no commercial use of content that doesn’t require their permission first.
The opposition to the Eldred Act reveals how extreme the other side is. The most powerful and sexy and well loved of lobbies really has as its aim not the protection of “property” but the rejection of a tradition. Their aim is not simply to protect what is theirs. Their aim is to assure that all there is is what is theirs.

って書いてて、長いけど要するに、「出版社が本当に心配してんのは、パブリックドメイン著作権切れ)の本がスキャンされて公開されると、そん中にはすばらしい本がたくさんあるわけだから、あの手この手を使って無理やり買わせようとしてる「最近の本」が売れなくなっちゃうじゃん、って方だよ」って書いてるから。出版社はパブリックドメイン本から利益をあげたいんじゃなくて、単に最新本の販売にとって邪魔にならんように、闇に葬りたいだけなんだね。


そうすると、Amazonが訴えられないのは、パブリックドメイン本をスキャンして公開するプロジェクトじゃなくて、比較的新しい本をスキャンして、販売促進に貢献するからなんじゃないの?それか、fuzzy2さんがコメントしてくれたように、

[Googleに対する]訴えの背景には「ちゃんとうちの本(新刊)を買わないとは何事だ!」という意図が隠れている[かもしれない]。この主張には法的な直接の裏付けは強くないと思いますが(だから複製権で訴える)、訴える動機として小さくないようです。・・・Amazonの場合は、本そのものを主力商品として売っていますから、Googleと比べれば多少は有利でしょう。

という感じで、なんともまぁ、出版社の心の中は複雑なのね。


そんで、何が言いたいかって言うと

  1. 出版社は、Googleをとりあえず訴えて、手っ取り早くキャッシュがほしいだけ (ちょっぴりせこいけど、ビジネスとしては当然)
  2. 長い目でみれば、パブリックドメインというのは営業妨害になるから、著作権保護期間をどんどこ延長させてパブリックドメインをなくしちゃうのがよい (かなり野心的で、長期戦略としてはかなり重要)
  3. Amazonは、売上に貢献してくれるし、とりあえず出版社の言いこと聞くから、見逃しておこう (いいとこどりは重要)

という3点。


ここで、注目したいのは、2番目の「著作権保護期間をどんどこ延長」という出版社の「欲求の発露」ね。GoogleYahoo!MicrosoftInternet Archiveが、のんきに「パブリックドメインだから、スキャンすっからね」って感じでスキャン作業を進めれば進めるほど、出版社はどんどこ追い詰められた気持ちになってきて、「ちくしょー、著作権期間をどんどこ延長してやる!」って意固地になる。


というわけで結論として、著作権保護期間の延長が問題にされるけど、それは『やっぱり著作権保護期間延長を批判する』で白田さんが書いてる

「おい、10円やるからもう少したくさん作品を作るんだ。」
といわれてホイホイ作るほど創作活動ってのは安っぽいものなんだろうか。

という攻撃作戦では、もはやどうにもならん面がありそう。そんで、こんな複雑心の出版社を丸め込んで、Amazonはうまいポジションを獲得したな、って思う。