Googleは、どこまでも冷静だったよ


約1ヶ月前、カレントアウェアネスっていう国会図書館のやってるサイトで、こんな記事があった。

2つの大学の契約条件の違いは?‐Google Book Search の契約書を比較する

先日、カリフォルニア大学からGoogle Book Searchに関する契約書が公開されましたが、同じくGoogle Book Searchに参加しているミシガン大学でも、Googleとの間で交わした契約書が公開されています。これら両大学とGoogleとの契約を比較したブログがあります。


でも、このカレントアウェアネスを見た人は、「へぇ〜、比較したら、そんな違いがあったんだ」で終わっちゃうかもしんない。だって、一番おもろい部分を伝えてないから。


何がおもろいかって言うと、



原文を見てみれば分かるけど、Coyleさんのブログ記事は、両方の契約書を比較してるだけじゃなくて、なんでこんな違いが出てんだ?ってことを考えて、UC-Google間の交渉風景を、おもろく想像してるんだよね。(本人は真剣なんだろうけどね。)


だから、例のカレントアウェアネスのタイトルは、「2つの大学の契約条件の違いは(なぜなんだ)?」ってするべきだったんじゃないかな、ってちょいと思うわけ。そうすると、カレントアウェアネスの伝えてない部分ってのが、いかに重要かわかるでしょ?


とりあえず、基本的にCoyleさんの主張は、こういうこと。(原文はこちらね。)

UCとミシガンでは、ミシガンの方が早く契約してる、
ってことは、もし両方の契約内容に違いがあんだったら、そりゃ、
Googleの立場からすれば、最初のミシガン契約でやらかした失敗を反省して、
今度は、ちゃんとしましょうね、ってことだろうし、
逆に、UCの立場からすれば、ミシガンとはあんな契約をしたらしいから、
うちは、もっと値切っちゃってさ、いいとこ取りしようよ、ってことだろう。


そんで、いくつも例が出てんだけど、一個だけ紹介する。

So it sounds like the University really, really, really wanted the coordinates and Google really, really, really wanted to make sure that the University would not drag its heels in terms of providing the books to Google. So these two inherently unrelated desires became bargaining chips.

って感じで、要するに、

UCは"the coordinates"って呼ばれてるデータが欲しくてたまらん一方、Googleはちゃんと毎日3,000冊がスキャンしたいってわけ。だから、おそらく交渉テーブルでは、UCが「"the coordinates"をくれなきゃサインしないもんね!あっかんベーッだ!」って言って、Googleは「分かった、UCさんよ、"the coordinates"はくれてやるから、頼むから毎日3,000冊って約束だけは守ってくれな」ってことが話し合われてたんだろうな

って想像して、ニヤニヤしてたらしい。



さすが、業界が長いCoyleさん。よく分かってるよ。何が「一番重要」かってことをね。
おそらく大量スキャン業界にいない人は、"the coordinates"って何だ?そんなもんなんで重要なんだ?って思うはず。


ところが、すでに何度かこの記でも書いてる通り、Googleがなんでスキャン画像を無料で配布しちゃうかって言うと、そんなもん、うまみとった後の「カス」だから。そんで、マニア的に言わせてもらうと、"the coordinates"こそ「カス」じゃなくて、まだまだ「ダシ」とれちゃう貴重品なんよね。("the coordinates"は、次回詳しく紹介するね。長くなるし、かなりマニアックだから。)それまでおまけにつけちゃうなんて、Googleって太っ腹(か、ただのアホ)って思うわけ。


でも結果を見ると、Googleはアホでも、太っ腹でもなく、どこまでも冷静だった、ってことだな。
だって、Googleにとって死活問題である「毎日3,000冊」ってのを、条件として切り返したんだろうから。さすがだな。(それか死守したんだな。)
またもこの記で紹介してるけど、「3,000冊/日って、毎日引越ししてるようなもん」で大変だよ。契約書に明記でもしとかなくちゃ、途中でちょろまかされて、「いいじゃん、今日は300冊でも。300も3,000も、変わりゃしないよ。ゼロひとつくらいで、あんたガタガタうるさいね、本当にアメリカ人なの?」なんてことになるわけ。(おそらく、ミシガンの運び出し作業はトロいんだな。そんでムカついてんだよ。でも、Googleもできるだけ早くスキャンしちゃいたいわけさ。)


というわけで、Coyleさんが書いてるのは、そんな交渉裏事情であって、単に「比較しました!」なんてもんじゃない。
まぁ、これが真実か否かってのは知らんけど、とりあえず説得力あるし、そんなことよりまず、おもろい!