『グーグルが本の電子化で狙う「うまみ」の正体は』に応える(当面の最終)


変人集団Googleに一人で立ち向かう「変人」(おそらくこれまでの流れで、最高のほめ言葉であると、本人も理解してくれるはず)が、予想外に早く訪問してきたため、三上さんへの応答シリーズ最終版が遅れちゃった。あんだけ目の前で実証してもらっちゃ、もう書く必要もないことかもしんないけど、とりあえず追加もして書こうと思う。そんで、最後は、「魔球」ではなく、「直球」で。


いつものKellyさんからスタート。(http://www.kk.org/writings/scan_this_book.php

each book is pretty much unaware of the ones next to it

というわけで、「本棚で隣に置かれてたって、赤の他人なわけさ」。


でも、

(but once books are digitized,) each word in each book is cross-linked, clustered, cited, extracted, indexed, analyzed, annotated, remixed, reassembled and woven deeper into the culture than ever before. In the new world of books, every bit informs another; every page reads all the other pages.

というわけで、「電子化されると、みんなが会話を始める」ってわけ。そして、つながり(リンク)ができるわけ。


そんで、「記憶する住宅」の美崎さんは、別の記事の中で、

リンクで重要なことは、ハイパーテキストを使い続ければ、本文じたいよりもリンクのほうが相対的な価値を増していく可能性があることだ。情報は単独では存在し得ず、何かとつながっていることそのものに価値が出てくることがある。それがハイパーテキストの可能性である。・・・一見文字として何ら価値のないものと思われる無数のリンク情報が、無限の価値を秘めているといえるだろう。

と言ってる。


美崎さんはまだ「可能性がある」って話だけど、またある意味変人の土屋俊さんが、こちらの話の中で、

「本」とはリンク集である(P.5)

(したがって、)本に内容などはない

そういえば、紙の時代にもそういう要素はたくさんあった

  • 目次
  • 脚注、巻末注
  • 索引

さらに、

  • 引用
  • 参考文献

そして、紙だと使いにくかったが、ウェブだと容易(P.20)

と突き進む。(ただ、美崎さんの考える「リンク」と、土屋さんの「リンク」は、ちょっとだけ違う(かな)。というか、美崎さんに言わせると、相当違うはず。だって、美崎さんは、「いまのWebは複雑過ぎて、あれじゃあ理解できないのもしかたがない」派だろうから。)


そんで、「紙だと使いにくかったが、ウェブだと容易」というのが、本の電子化によって、Googleが提供できる付加価値の一部で、もし本どうしのリンクをうまくはる仕組みとそれをたどる仕組みを提供してくれんだったら、そりゃ、もっと多くの人が集まってくるよ。


そんでその「リンク」に関して、
http://d.hatena.ne.jp/bookscanner/20060928
http://d.hatena.ne.jp/bookscanner/20060929/p1
で、書いたけど、あんまし誰も相手にしてくんなかった。おそらく、疑問が初歩的すぎだ、って判断だろう。*1



結局、アンカーテキスト効果の存在は理解できたんだけど、直接

<a href=”Scan This Book! ”>本が本を読む</a>

っていうことを書いてないし、他のサイトでも見つからない以上、アンカーテキストの周辺から、勝手にGoogleが「本が本を読む」って単語を選び出してきたことになる。それか、リンクができた後、そのリンクのおおもとになったページ自体が、姿を消したのかもしれない。(かつては存在してたんだよ、っていう痕跡だけ残して。)まぁ、どっちでもいいんだけど。


もしかしたら、検索好きの人からすれば、アンカーテキスト効果やページランクなんてのは当たり前じゃん、って感じなのかもしれないけど、本当に知りたいのは、アンカーテキスト効果ってもんの存在そのものじゃないんだよね。むしろ、数多くある単語の中から、なんで、「本が本を読む」って単語だけが、Kellyさんの論文へつながったのか、って部分が、知りたかったんだけど、迷宮入りだな。こりゃ。


なんでこんなことをうだうだ言ってるかっていうと、2chの「142 :名無しさん@お腹いっぱい。:2006/05/04(木) 19:34:10」さんが、

「このページにむけて張られているリンクに含まれています」(アンカーテキスト効果で表示される検索結果)はマジうざい。
そんなページいらねっつうの。

って言ってて、その気持ちはすご〜く分かるんだけど、でも、たまにはいいこともするよ、って言いたかった。


だって、そのアンカーテキスト効果は、「本が本を読む」なんて「正しい日本語」ではない言い回しと、ちゃんとした英語の論文との間に、窓を開けてくれたわけ。数打ちゃあたるかもしれないわけで、もし1500万冊の本が電子化されて、OCRで文字データ化されて、相互のリンクが機械的に付けられて、さらに部分的に読んだ人がタグったり、アンカーつけたりしたら、それこそ、「意外なつながり」というのが、あちこちで発生するわけでしょ。


そーすっとね、梅田さんが『ウェブ進化論』の138ページに「書けば誰かに届くはず」って書いてて、それを鵜呑みにして、この記を始めたbookscannerが、ちょっとしたことから、いろんな人とネットで交流してるように、「書かれてポツンと置かれた本も、きっとどっかの本に届くはず」なんだよ。そして、引用とか参考文献を介した「正当派のつながり」だけでなく、アンカーテキスト効果のもたらす「なんだ、このつながり」ってのが出てきて、新しい発想につながっていくんじゃないかな、って思ったわけ。


そんで、そんな発想装置として機能するんだったら、たくさんの人がわんさか押し寄せるだろうから、Googleは高いお金出して、本を電子化しても、やっぱり元とれるよね。おいしいよね、って思う。


長くなって申し訳ないけど、最後の最後に、発想装置がどんな感じか、ってこと。

三上さんは、http://d.hatena.ne.jp/elmikamino/20060929/1159553163で、

「世界は成立していることがらの総体である」

ってのを授業でやったよ、て書いたら、美崎さんが

あ、出てきた…。ブルース・リーが引用してました。抜き書きまである…。

ってコメントしてて、こんなリンクを貼ってる。


これって結構、突拍子もない発言なわけ。ブルース・リーが突然出てきたりして。


でも、惹かれてリンク先の画像(美崎さんのデスクトップ)みてたら、

「洗練されたものほど、それは簡略なものに向かう。洗練度がまだ中途半端なものは、いろいろと飾りに走る」

ってのが上の方にあって、そのすぐ後ろに、

これはウルトラマンの話にも通じるなぁ。

ってコメントが付けられてた。


そんなこんなで、ウィトゲンシュタインは、ウルトラマンともリンクが張られたわけで、こりゃ、どえらい世界だな、って思った。
これが、あと数年でGoogleが提供できるかもしれない発想装置なのかな、と思うと、ニヤっとするわけ。


そんな未来を垣間見た数日だったな。