美崎薫さんと言えば、BTRONなんだそうだが...

美崎薫さんと言えば、巷では、BTRONというもので有名なんだそうだが、知らんかった。
そもそもBTRONというものを知らんかった。

私はてっきり、美崎さんと言えば、「記憶する住宅プロジェクト」の人なのだと、ず〜っと思ってた。少なくとも今年の初めくらいまでは。今は、「あ、美崎さんね、BTRONの人でしょ?」って言える。でも、いまだにBTRONについては、あまり知らず。

それはさておき、このヘンテコなプロジェクトを知った2003年っていうのは、私が勝手に「大量スキャンプロジェクト元年」って呼んでる年。なんでかって言うと、


2003年を振り返ってみると、


2003年3月3日、日本がひな祭りで浮かれている中、米国の自動ブックスキャナ会社であるKirtas Technologies社が、突然、「来月、自動ブックスキャナを展示会に出すよ」って発表した。実際に展示会に出したんだけど、日本人はあまり知らなかった。ひな祭りで浮かれてたからじゃなくて、SARS重症急性呼吸器症候群)がはやってて、渡航禁止みたいな状態だった。しかもいろいろと戦争してたしね。当時の様子を、こちらが伝えてる。

2003年で10回目となるNYオンデマンドショーは、イラク戦争の勃発やニューヨークが季節外れの吹雪に見舞われるなど悪条件下の開催であったが、ドキュメントマネジメント関連のイベントであるAIIMショーとの共同開催の効果などもあり、3日間に27,500人が来場した。新型肺炎SARSの影響により、日本企業のほとんどが社員の海外出張を禁止しているため、日本からの来場者はほとんど見られなかった。


そんで2003年5月、米国の名門校スタンフォード大学の図書館が、「スイスの4digitalbooks社製自動ブックスキャナを買ったよ」って言い出した!当時のスタンフォード大学図書館の発表によれば、

Upon its arrival at Stanford in October 2002, the DL underwent a rigorous testing phase,...

In February of 2003 the DL underwent a five-day long acceptance test, during which the Media Preservation unit confirmed the functionality, durability, page-turning rates and safety of the DL for a wide range of book structures and materials.

ってな感じで、「実際には2002年にスタンフォードに製品が届いたけどさ、最終的な検品は、2003年2月にやったよ」とのこと。(4ヶ月もかかるなよ、って感じもしないでもないが、まぁ、全く新しいコンセプトの製品なので、仕方ないか。)


さらに、2003年10月、梅田さんが『アマゾンが仕掛ける「書籍のグーグル」は成功するか』ってタイトルで、2001年くらいからAmazonが「やるよ、やるよ」って言ってきた「仕掛け」が開始されたことを告げた。当時の常識がどんなだったか、っていうと、

書籍全体のフルテキストサーチの対象は、...(なんと!)12万冊、3300万ページに及ぶ。

ダウンロードはできないけれど、3300万ページ(12万冊)のすべてにもう既にアクセスできるようになってしまっているのだ。これは大変なことだと思う。

っていう感じ。今となっては、1500万冊/60億ページに及ぶスキャンプロジェクトが進行中だから、みんな麻痺してるかも知んないけど、2003年当時にこんなこと聞いたら、腰抜かすよ。だって、12万冊だよ。



とまぁ、こんな時代だったわけよ、2003年ってのは。
そんで話を元に戻すと、そんな時代に、あんなヘンテコなプロジェクトを目にしたわけ。

プロジェクト全体はさておき、本のスキャン部分だけを見てみると、

作業を開始した時点で、過去に蓄積した紙資料の総量を見てみると、9畳の部屋の壁すべてが天井まで本棚であり、しかも本は最低2列、約半分は3列に詰め込まれていた状態だった。本棚の床面は見えなかった。1冊の厚みを1cmとして概算すると、次のようになる。

壁片面=幅540cm×高さ7段で3,780冊。前後に2列として考えると7,560冊。これが壁の両面だから15,120冊である。さらに、1冊の本が200ページだとすると、302万4,000ページだ。人生で、これまでに目にしたすべての紙のページは、300万ページなのであった。

それをすべてデジタル化することにしたのだ。

という。しかも、美崎さんは、

最初は、自分でスキャナを使ってデジタル化した。

自分でスキャナを使って取り込んだ総数は不明なのだが、3,000枚とるごとにスキャナが壊れた。スキャナメーカーに聞いたら、そんなにヘビーに使うことを想定していない。「1万円で売っているスキャナなので、それが寿命です」と説明された。

数台を壊したので、1万枚以上は自分で作業しただろう。


自分でやるんじゃ大変だってことにやっと気づいたみたいで、やっぱり外注することに決めたらしい。
そんで、ペースとしては、

年間で20〜30万枚程度を外注(してて、)2002年1年間で、約20万枚のスキャンが終了した。(2003年の執筆当時)人生で目にしたすべての紙は、200万ページ。そのうち、約40万ページ分のスキャンが終わった。約1/5程度なのだろう。

ってことらしい。もう終わったかな?

いくらかかるかっていうと、

費用は1枚10円である。…(200万ページだとすれば、2000万円であり、しかもこれはコンテンツ作りのみで、さらにハードの調達もあるわけで)人生全体をデジタル化するのに、住宅と同じくらいの規模の予算が必要である。「記憶する住宅」は、予算の規模でも住宅並みなのである。

とのこと。


そんで、なんで今頃、「記憶する住宅」の話をしてるかっていうと、3つあって、

  1. bookscanner史上、美崎さんに次ぐ根性の持ち主が現れたから。これまでにも何度か紹介してるけど、fuzzy2さんは、家庭用スキャン使って、がんばってスキャンしてるよ。最近、画像の傾き計測まで進んだ。すごい。
  2. 最近、美崎さんの家に取材しに行った雑誌があって、読んでみたいなぁ、って思ってるから。
  3. 最後に、三上さんへの返答の一部として、「記憶する住宅」ってのも念頭にいろいろ考えてたんだよ、って伝えるため。美崎さんの「記憶する住宅」ってのは、この記事によると、

読んだ書籍や論文などはもちろん、映画パンフレットやチラシ、新聞記事、小学生時代の通信簿や恋人からのラブレターに至るまでスキャンしてデジタルアーカイブ化している。2000年頃から始めたスキャン画像は、(2004年当時)66万枚に及ぶという。・・・もちろんアノテーションをつけたりハイパーリンクを張って体系化するということが前提である。

らしい。このあたりから、じゃ、美崎さんは何やってんの?って考えてて、いまだ思案中。