「しかたなく画像派」

前回、画像派/文字派って区別ができる、って話をした。


そんで、画像派の特徴は「画像でなきゃ意味がない」ってところにあって、かなりすっきりしてんだよね。


ところが問題は、文字派で起こるわけ。




電子化の過程で、文字派が直面する問題ってのは2つあって、

  1. 手作業による文字入力ってはかなり大変で、疲れちゃう
  2. かといって、OCRってのも、結構あてにならん

ということ。


ならば、出版社からデータをもらいたいところだけど、Y氏によると、

書籍の製作過程が、ほとんど電子化されていると言っても実はそのデータが残っていない。また残っていてもそこから電子書籍をつくるのは大変な苦労がかかる。外字の問題もあるしテキストデータの吸い出しにも問題がある。それでは本を電子化するまでで息切れを起してしまいます。*1

ってな感じ。


こんなもろもろの事情から、「本当は文字データとしてやりたいんだけど、しかたないから、画像でがまんしよっか」っていうグループがいて、「しかたなく画像派」となる。


この積極的なアイデンティティに欠けた「しかたなく画像派」だけど、電子化業界では、現在の主流と呼べるんじゃないかな。Googleも、Amazonも、Internet Archiveも、Microsoftも、全て「しかたなく画像派」の一味だと思うよ。


そんで比較すっと分かりやすいかもしんないので、簡単に触れておくけど、前にも紹介したQuestia社(http://d.hatena.ne.jp/bookscanner/searchdiary?word=Questia)なんかは、最後の大物「文字派」だったと思うよ。したがって、2001年にAmazonは、Questiaにとどめをさしたと同時に、「文字派」から離脱し、そして新派結成ってことになった、と考えてる。


(おまけ)

ちなみに、Y氏は、

そもそも紙の本はその内容に合わせて最適のレイアウトをしているんです。それを崩して携帯電話で読ませる神経がわかりません。本という文化を軽視し過ぎているんじゃないですか。

(中略)

だから(端末に)文字だけ流し込んで(、)ハイ電子出版(って感じで提供する)ってのはまったく間違っているんじゃないですか。

って言ってるんだけど、これは前回見た「シェークスピア」と同じで、「画像派」の典型的な主張ね。ちょっとナイーブな主張なんだけど、このあたりの話(http://d.hatena.ne.jp/bookscanner/20061123/p1)とコンポンは同じね。

*1:長谷川 秀記. "画像派Y氏への仮想インタビュー". 情報管理. Vol. 47, No. 1, (2004), 53-55. ただし、長谷川さんの「画像派」って用語と、この記の「画像派」は意味が違うので、注意して読んでね。