「古文書」電子化と怒った歴史家

最近の本とかを電子化しよーとすると、著作権の問題で、出版社・作家組合と揉めるでしょ。

かといって、著作権なんて、とーの昔に切れてるか、そんなもんはなっからありゃしないような、「古文書」みたいなもんを電子化しようとすると、また別の揉め事が発生しちゃう。「兎角に人の世は住みにくい。」


どんなことになってるかっちゅうと、
1月第2週になって、電子化業界では、ちょいとしたニュースが流れた。(おそらく、世間一般には、たいしたニュースだとは思われん類。)

1月12日のカレントアウェアネスを見ると、

米国公文書館(NARA)はFootnote社と協定を締結し、NARAが所蔵する公文書のうち、約4,500万ページを電子化して、Footnote社のサーバー上で公開することを発表しました。

ってな感じ。普通の本に換算すると、約15万冊くらいね。結構大きな量だね。


Footnote社のサービスってもんが、どんなもんなのかは、http://akihitok.typepad.jp/blog/2007/01/wikipedia_footn_65d3.htmlを見ると、分かりやすい(かもしんない)。そんで、POLAR BEAR BLOGのアキヒトさんをして、

部屋にいながらにしてベンジャミン・フランクリンの手紙が見れるだけでもすごいのですが、このサービスの真骨頂は「公文書に脚注が付けられる」という点。

と言わしめた、この一見「便利でいいじゃん、楽しそうじゃん」サービスに対して、怒ってる歴史家がいるわけ。


Dan Cohenさんっていう人なんだけど、http://www.dancohen.org/blog/posts/national_archives_footnote_agreementを、bookscanner的にまとめると*1

Footnote社は、米国公文書館の持ってる資料を、タダで電子化する。

そのかわり、Footnote社は、電子化したもんをビジネスとして使う権利みたいなもんを認められる。(5年間ね)

これっておかしくないか?昔のこと知ろうと思ったら、毎年100ドル払ったりしなくちゃいけないのか?

スミソニアン博物館が似たようなことをした時は、みんな、あんなに熱く抗議したじゃないか!

おいらは、ひとりでも抗議するぞ。こんなの絶対いやだー。タダで見せてくれー。

ということ。ちなみに、スミソニアン事件を知らん人は、まずはこちらを。


でも、Footnote社のやってることって、大して悪いことじゃないと思うよ。Cohenさんみたいに、目くじら立ち上げて怒るほどのことでもないよ。Cohenさんも自分で、

For the next five years, unless you have the time and money to travel to Washington, you'll have to fork over money to Footnote to take a peek at Civil War pension documents or the case files of the early FBI..

ってな感じで書いてる通り、「Footnote社に年間100ドル払うのやだったら、時間と旅費使って、ワシントンDCにある米国公文書館まで行けば、タダで見せてくれる」わけなんだから。ちなみに、サンフランシスコからワシントンDCまで行くと、飛行機代だけで400ドルくらいかかるし、機内で頻繁に運動しないと、「エコノミー症候群」になっちゃうかもしんないから、100ドル*2だったら、払っちゃうな。


結局何が言いたいのかっていうとね、「過去を振り返ってみると、こういう「古文書」みたいのは、Grantと呼ばれる「補助金」をお金持ちからもらっきて、米国公文書館とかがのーんびりと電子化してたわけ。そんで、のんーびりと電子化したもんを、のんびーりと無料で公開してんだけど、誰もしらなかったりするわけ。一方、このFootnote社みたいな電子化モデルってのは、これから増えてくると思うんだよね。Googleとかも同じようなことしてるわけだし。無料であんたんとこの資料を電子化するから、最初の5年くらいは、商用利用させてねって感じ。そんで、こういうプロジェクトの特徴は、パキパキすばやく電子化していくんだよね。公開するときだって、みんなが楽しめるような工夫をするわけ。みんなは、それでも、Footnote社みたいな電子化モデルはお嫌いかしらん?*3」ってこと。

*1:つまり、訳はいい加減+尾ひれ付きなんで、あまり信用しちゃいかんよ、ってことね。ちゃんと知りたい人は、原文参照。

*2:スタバのトールコーヒー:66杯分

*3:米国公文書館の資料が、Footnote社経由じゃないと見れないんだって言うんだったら、話は別だよ。実は、スミソニアン事件はそれが問題になったわけ。でも、今回のFootnote社に関して言えば、ワシントンDCに行けば、いままでどおり、普通に見せてくれるんだよね。