「自動車」における「自動」の意味

過去2回、フランスのInfotechnique社の様子を伝えたよ。今日は、Internet Archive社のスキャン現場を見てみましょ。タイトルを「本はこうしてスキャられる(3)」とすべきだったかもしんないけど、思うところあって、変えてみたよ。


もし10分くらい時間があるなら、このビデオを見てね。今から2年前のビデオね。この分野における技術進歩のスピードを考えると、このビデオに写ってる2004年の状況ってのは、大昔のこと。でも、基本的な部分は変わらない(はず)。
http://www.archive.org/stream/scanning_robot/scanning_robot_256kb.mp4

 時間  だいたいの内容
 00:00 - 06:40   Jonathanさんが、作業してる風景
 06:40 - 08:30   スキャナが置いてあるトロント大学の風景
 08:30 -    再びJonathanさんが、作業してる風景


もし、3分しかないひとは、こちら。
http://video.google.com/videoplay?docid=6070106005799367887


1分しかない人は、こちらの写真を見に行こう。
http://www.archive.org/movies/thumbnails.php?identifier=scanning_robot



さて、本題にいきましょ。
こちらの質屋さんによると、ブランド品には「本物とニセモノの見分け方」があるらしい。


さっそく、「本の電子化」に応用すっため、あるブログにつけられたコメントをみましょ。

The Kirtas machines are by no means fully automated, they require a dedicated operator for each machine. Also, the average throughput is far below the 1200 or 2400 that is theoretically possible, when you take into account the time it takes to process the images with the included software. For color output you would be lucky to get 500-600 pages per hour. Also they are unsuitable for many of the larger dimensioned volumes that Europe has. That's why Infotechnique uses four of the Swiss 4digitalbooks machines, in addition to a single Kirtas APT2400. The 4digitalbooks machines can do the big volumes, and at higher resolutions than the Kirtas.

ってなわけで、彼によると、(最近Microsoftと契約したっていう)Kirtas社のマシンについて、

  1. 全然「全自動」じゃないじゃん!マシンにオペレーターがひっついてなきゃいかん。
  2. 1時間に1200ページできるって言うけど、取り込んだ画像の後処理時間を考えれば、全然そんな数の処理できんよ。
  3. カラー画像だと、せいぜい、500〜600/時間ってのが限界だよ。
  4. しかも、ヨーロッパでは結構大きい本が多いんだけど、大きすぎてスキャンできないじゃん。
  5. だから、Infotechnique社は4DigitalBooks社の製品を4台も買ってるのに、Kirtas社のマシンは1台しか買ってないんだよ。
  6. 4DigitalBooks社のマシンは、Kirtas社のマシンより、早く、そんで、もっと高い解像度でスキャンできるよ。

って言ってる。


このコメントをしたSteveさんが誰なのか知らんけど、おそらく、「本のスキャンをしたことがないくせに、(想像で)文句いいたがり〜」か、「4DigitalBooks社を売ってるひと」だろうな。まぁ、どちらにしろ、本のスキャン現場で何が起こってるのか、ってことがあまり反映されてないコメントだね。つまり、このコメントはニセモノってこと。


じゃ、どこがニセモノなのかっていうと、挙げればキリがない*1ので、今回の「Internet Archive社ビデオ」に関係するところだけね。さっき、ビデオ見た人は、オペレーターが結構手を使って作業してんのをみたでしょ?ビデオ見んかった人は、下の写真見ると、オペレータが手で本を触ってんの分かるかな?これはマシンがページめくりをした後、手を使って、ページ表面を平らにしてんだよ。


そんで、こういう映像を見ると、カナラズ、Steveさんみたいな人が出てきて、「全然「全自動」じゃないじゃん!」って言う。確かに、「全自動」ではない。「全自動」ってのは、安研のmizukawaさんが紹介してるような、「すご〜い洗濯機」とかを指すんだろう。*2


ところが、本はね、結構たくさんの問題抱えてて*3、スキャナに放り込んで、スイッチぽん!はい、出来上がり!ってわけにはいかんのよ。だから、実際に大量スキャンをしたことがある人は、「全自動」マシンなんてものはとーてい無理で、むしろオペレーターが適宜手を加えられる「自動」マシンが必要だ、って思うわけ。そんで「自動」と言えば、自動車ね。自動車ってさ、乗ったら勝手に目的地につくわけじゃないよね。運転しなきゃいかんよね。Steveさんがもし、「居眠りしてても、目的地に安全に到着しない自動車なんて、全自動じゃない!なんで、運転せなあかん?」って文句言うってんなら、それは話が別で、ある意味、本物だね。


というわけで、結局何が言いたいのかっていうと、「本のスキャン」ってのは放っとけば完了するような「全自動」作業じゃないんだよ。でも、「全自動じゃない」からダメだ、なんて言わないで、寂しいよ。自動車は、人間が一生懸命運転しないといけないけど、それでも自転車や徒歩より早く目的地につくでしょ?そんな感じで、「本の電子化」も温かく見守ってね、ってこと。

*1:ほとんど全部ニセモノってるか、結構偏った「宣伝」だから

*2:「自動」に関する哲学的考察は、http://kotonoha.cc/no/47527http://www.right-staff.jp/cooky/tosaka/tool4/tool4.htmlを参照。

*3:http://www.city.yokohama.jp/me/kyoiku/library/central/all_bun061027.htmlにあるような問題だけでなく、ページがくっついてたり、角が折れてたり、今にもとれちゃいそうなページとか、いろいろね